設備保全をしていると、突然設備が停止することがあります。
今回発生したのは、次亜塩素酸ナトリウム(12%)を注入している薬液ポンプの故障でした。
この設備は長期間停止できません。 薬液注入が止まると設備全体へ影響が及ぶため、一刻も早い復旧が必要でした。
故障したポンプ
故障したのは、タクミナ製の電磁定量ポンプです。
仕様を確認すると、
- 吐出量:30mL/min
- 最高圧力:1.0MPa
という能力でした。
在庫を確認すると…
同じ型式の在庫はありませんでした。
しかし倉庫には、イワキ製の電磁定量ポンプが保管されていました。
メーカーは異なりますが、
- 吐出量:30mL/min
- 最高圧力:1.0MPa
必要な吐出能力と最高圧力は一致しています。
しかし、 能力が同じだから、そのまま置き換えられるとは限りません。
まず確認したこと
薬液ポンプの型式には、多くの情報が含まれています。
さらにメーカー資料を確認しながら、次の項目を一つずつ確認しました。
- 吐出量
- 最高圧力
- 接液材質
- ダイヤフラム材質
- Oリング材質
- バルブ材質
- 電源仕様
- 運転方法(無電圧外部接点・パルス入力・アナログ入力など)
- 設置寸法・配管接続
今回は次亜塩素酸ナトリウム12%を注入する設備です。
そのため、能力だけではなく、 接液材質との適合性も重点的に確認しました。
制御方法も重要な確認項目です
薬液ポンプは能力や材質だけでなく、運転方法も機種によって異なります。
今回故障したタクミナ製ポンプは、 無電圧外部接点によるON/OFF運転で制御されていました。
代替候補のイワキ製ポンプも同じ運転方式に対応していたため、制御盤を応急改造することなく、そのまま置き換えることができました。
もし運転方式が異なっていれば、制御回路の変更や追加回路が必要になる可能性もあります。 そのため、運転方法の確認も非常に重要なポイントでした。
型式と資料から見えてきたこと
メーカー資料を確認すると、イワキ製ポンプの接液部にはPVC・PTFE・セラミック・FKMなどの材質が使用されていました。
その中でも、OリングやバルブシートにはFKM(フッ素ゴム)が採用されています。
FKMは多くの薬液に対して優れた耐薬品性を持っていますが、次亜塩素酸ナトリウムのような強い酸化剤では、長期間使用すると劣化しやすい場合があります。
つまり、長期使用には注意が必要な仕様であることが分かりました。
現場での判断
今回の条件は次のとおりです。
- 設備を長期間停止できない
- 運転は間欠運転
- 代替機は在庫品のみ
- 必要能力は一致している
- 運転方法も一致している
- 材質上のリスクは把握できている
これらを総合的に判断し、 応急対応としてイワキ製ポンプへ交換しました。
交換後は、
- 漏れの有無
- 薬液吐出状況
- エア噛み
- 異音・異常振動
を重点的に確認し、現在も応急運転は順調に継続しています。
今後の対応
今回の交換はあくまでも応急処置です。
現在、タクミナ製ポンプを手配中であり、入荷後に本来の仕様へ復旧する予定です。
取り外したイワキ製ポンプは、水洗運転を行って内部の次亜塩素酸ナトリウムを十分に洗い流した後、水抜き・乾燥を実施し、再び予備品として保管する予定です。
予備品は「保管すること」が目的ではありません。 いつでも安心して使用できる状態で保管することが重要だと考えています。
今回学んだこと
設備保全では、「同じ能力だから大丈夫」という考え方は危険です。
型式には能力や仕様を読み解くための情報が含まれており、メーカー資料と照らし合わせることで接液材質や運転方法なども確認できます。
薬液設備では、能力だけではなく、接液材質や制御方法まで含めて確認することが重要です。
メーカーが違っていても、仕様を一つずつ確認し、リスクを理解した上で判断すれば、応急対応できるケースもあります。
もちろん、これは応急対応だからこその判断です。 最終的には設備本来の仕様へ戻すことを前提としています。
Care Bridgeのひとこと
現場では、「部品が無いから直せません。」では済まない設備があります。
私は、同じ型式が無いからといって思考を止めるのではなく、仕様を比較し、安全性を確認した上で代替できる方法がないかを考えます。
在庫品をどう活かし、設備を止めないか。
それも設備保全という仕事の大切な役割だと考えています。
設備を止めないこと、そして予備品を次に安心して使える状態で残すこと。
これも「お手入れ次第で、良いもの長持ち!」というCare Bridgeの考え方につながる保全だと私は考えています。
