インバータ駆動ギアモーターが低速でしか回らないときの切り分け方

設備トラブルの現場では、見えている現象だけで原因を決めつけると、調査の方向を間違えることがあります。

今回の事例は、インバータで駆動しているギアモーターの速度低下トラブルです。

通常は20Hz付近で運転していたギアモーターが、4Hz程度でしか回らなくなった。

こう聞くと、すぐに

「インバータが悪いのでは?」
「モーターが壊れたのでは?」
「機械側が重いのでは?」

と考えたくなります。

しかし、最初に大切なのは、原因を決めることではありません。

まずは、

インバータが4Hzで回せと言われているのか
20Hzで回そうとしているのに、4Hz程度までしか上がらないのか
20Hzで出力しているのに、機械側が遅く見えているのか

この3つを分けて考えることです。

ここを分けるだけで、調査の方向がかなり整理できます。


対象設備と現象

今回の対象は、インバータ駆動のギアモーターです。

条件は以下のようなものでした。

・電源:AC440V
・容量:1.5kW
・ギア比:87:1
・通常運転周波数:20Hz
・症状:通常20Hzで回っていたものが、4Hz程度でしか回らなくなった

このような症状の場合、単純に「モーターが遅い」と見るのではなく、インバータ表示と実際の機械の動きを分けて見る必要があります。


最初に分けるべき3つのパターン

1. 周波数指令そのものが4Hzになっている

まず確認したいのは、インバータの周波数指令値です。

もし周波数指令そのものが4Hz付近になっているなら、インバータやモーターが悪いとは限りません。

この場合は、インバータが

「4Hzで運転しなさい」

という指令を受けている可能性があります。

考えられる原因としては、

・外部ボリューム不良
・アナログ信号の低下
・PLCからの速度指令異常
・多段速入力の間違い
・低速運転入力が入っている
・手動/自動切替による別設定
・インバータのパラメータ変更
・上限周波数や速度制限の設定変更
・通信指令側から低い速度指令が出ている

などがあります。

この場合、モーターや減速機を疑う前に、速度指令系を見る必要があります。


2. 20Hz指令はあるが、出力周波数が4Hz付近で止まる

次に考えるのは、周波数指令は20Hzなのに、実際の出力周波数が4Hz付近で止まっている場合です。

この場合は、インバータが何らかの理由で周波数を上げきれていない可能性があります。

代表的なのは、

・ストール防止
・電流制限
・トルクリミット
・過負荷
・加速中の電流上昇

です。

機械側が重くなっていると、インバータは設定通りに周波数を上げようとしても、電流が増えてしまい、保護的に周波数上昇を抑えることがあります。

このときは、出力電流が重要です。

20Hz指令なのに4Hz付近で止まり、出力電流が高い場合は、機械側の負荷異常を疑います。

たとえば、

・減速機の異常
・軸受の固着
・チェーンやスプロケットの噛み込み
・搬送物の詰まり
・異物噛み込み
・ブレーキ開放不良

などです。


3. 周波数指令も出力周波数も20Hzだが、機械側が遅い

もうひとつのパターンは、インバータの周波数指令も実出力周波数も20Hzなのに、実際の機械の動きが遅い場合です。

この場合、インバータやモーターの速度そのものではなく、動力伝達部の異常を疑います。

考えられる原因は、

・カップリングの滑り
・キー破損
・スプロケットの空回り
・チェーン異常
・シャーピン折れ
・減速機内部破損
・出力軸側で動力が伝わっていない

などです。

モーター軸や減速機入力側は回っているのに、出力側や機械側が遅い場合は、動力がどこで途切れているかを順番に確認する必要があります。


まず見るべきインバータ表示

このようなトラブルでは、現場で最初にインバータ表示を確認します。

特に見るべき項目は以下です。

・周波数指令値
・実出力周波数
・出力電流
・出力電圧
・アラーム履歴
・ストール防止の動作有無
・電流制限の動作有無
・トルクリミットの動作有無
・運転指令が外部かパネルか
・速度指令がアナログか、多段速か、通信か、PLC指令か

この中でも特に重要なのは、

周波数指令値
実出力周波数
出力電流

です。

この3つを見るだけでも、かなり切り分けが進みます。


電流値で見えること

電流値は、原因を絞るうえで重要です。

4Hzで電流が高い場合

4Hz程度でしか回らず、電流が高い場合は、機械側が重くなっている可能性があります。

この場合に疑うのは、

・機械負荷異常
・ブレーキ開放不良
・減速機不良
・軸受不良
・チェーンやスプロケットの噛み込み
・異物噛み込み

などです。

インバータは周波数を上げようとしているのに、負荷が重いため電流が増え、保護的に周波数を上げきれない状態です。


4Hzで電流が低い場合

一方で、4Hzで電流が低い場合は、機械が重くて回らないというよりも、速度指令そのものが低い可能性があります。

この場合は、

・速度指令値
・アナログ入力
・多段速入力
・PLC指令
・通信指令
・運転モード
・インバータ設定

を確認します。


20Hz指令で電流が高く、出力周波数が上がらない場合

これは、ストール防止や電流制限が働いている可能性が高いです。

機械側が重い、または加速時に大きな負荷がかかっている状態です。

この場合は、インバータだけでなく、機械側の状態確認が必要です。


20Hz出力しているのに機械が遅い場合

この場合は、動力伝達部の異常が有力です。

インバータは20Hzを出している。
モーターも回っている。
でも機械側が遅い、または動いていない。

このような場合は、電気ではなく機械側の伝達経路を見ます。

・モーター軸
・減速機入力側
・減速機出力側
・カップリング
・キー
・スプロケット
・チェーン
・シャーピン
・負荷機械側

この順番で、どこまで動力が伝わっているかを確認します。


ブレーキ付きギアモーターの場合

ブレーキ付きギアモーターの場合は、ブレーキ開放不良も重要な確認項目です。

ブレーキが完全に開放されていないと、モーターは回ろうとしても大きな負荷を受けます。

症状としては、

・低速でしか回らない
・電流が高い
・モーターが唸る
・発熱する
・インバータが電流制限に入る
・加速しきれない

などが出ることがあります。

確認する項目は、

・ブレーキ電源が来ているか
・ブレーキ整流器に異常がないか
・ブレーキコイルが正常か
・ブレーキギャップが適正か
・ブレーキが半開放状態になっていないか
・ライニングが固着していないか

です。


モーター本体や出力側も確認する

もちろん、モーター本体やインバータ出力側の異常も可能性としてはあります。

考えられるものは、

・巻線劣化
・相間バランス不良
・絶縁低下
・モーター軸受不良
・内部短絡気味
・出力端子の緩み
・モーター端子箱内の緩み
・ケーブル劣化
・1相接触不良
・インバータ出力素子の異常
・相電流アンバランス

などです。

特に、各相電流に大きなバラつきがある場合は、モーター巻線・配線・端子・インバータ出力側の確認が必要になります。

絶縁抵抗が良くても、モーターが完全に正常とは限りません。

絶縁抵抗で見ているものと、三相バランスで見ているものは違うからです。


おすすめの切り分け手順

現場での切り分けは、次の順番が分かりやすいです。

  1. インバータ表示で周波数指令値を確認する
  2. 実出力周波数を確認する
  3. 指令が4Hzなのか、20Hz指令なのに4Hzなのかを判断する
  4. 出力電流を確認する
  5. 電流が高いか低いかを見る(電流値の平衡取れているかをみる)
  6. 各コイルの抵抗値はバランス取れているかをみる
  7. アラーム履歴を確認する
  8. ストール防止・電流制限・トルクリミットの有無を確認する
  9. 速度指令系を確認する
  10. 機械負荷側を確認する
  11. 必要に応じてモーター単体・インバータ単体を確認する

大切なのは、いきなり部品交換に進まないことです。

まず、

指令の問題なのか
インバータの保護動作なのか
機械負荷の問題なのか
動力伝達部の問題なのか

を分けます。


まとめ

インバータ駆動ギアモーターが低速でしか回らないときは、原因をひとつに決めつけないことが大切です。

まず考えるべきは、次の3つです。

  1. インバータが4Hzで回せと言われている
  2. 20Hzで回そうとしているが、負荷や保護動作で4Hz程度までしか上がらない
  3. インバータは20Hzを出しているが、機械側に動力が伝わっていない

この3つを分けるだけで、調査の方向がかなり整理できます。

最初に見るべき項目は、

・周波数指令値
・実出力周波数
・出力電流
・アラーム履歴
・ストール防止/電流制限の有無

です。

現場のトラブル対応では、見えている現象だけで判断せず、測定値と機械の動きをつなげて考えることが重要です。

「回っていない」のか。
「回せと言われていない」のか。
「回そうとしているが重くて回らない」のか。
「回っているが動力が伝わっていない」のか。

ここを分けて考えることが、原因調査の第一歩になります。

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